取り敢えず、会うことは会った。
 これでシドニーとの出会いと別れは完遂した。


 決して、彼には近付かない。
 シドニー本人が嫌っていた有象無象のファンとでも思ってくれたらいい。

 学院で同じ時を過ごすのは、たった1年間だ。
 前回は私の方からぐいぐい行ったので、繋がったけれど。
 3年生と1年生はそんなに交流することもない。
 やり過ごせる自信はある。



「ずっと王都で住んでる先輩かな?
 田舎には、あんなひと居ないよね……」

「……そうね、うん」 

 全く関わる気がないのだから、シドニーの噂話等にも自分から参加しない方が身のためだ。
 そう思って、私はメリッサが語るシドニー賛美を聞き流していた。


 そして心の中では、入学したばかりだけれど週末にはノックスヒルへ帰ろうと考えていた。
 憎きモニカを潰すためには、先ずクレイトンの現状を把握する必要がある。


 今日が何日で何曜日かさえ、まだ分かっていなかったけれど、放課後に祖父に会いに行くと決めた。