リビングのふたりを振り返ったら、フィリップスさんがオルと話をしているのが見えた。
 何か私には伝えたくないことがあって、内緒でオルの耳に入れてるの?
 それを見ただけで、胸が潰れそうになった。


 リアン、リアン!
 ……全部、全部モニカのせいだ!
『聖女様』なんて呼ばれて、さぞや気分は良かっただろう。
 だけど貴女の信奉者達がこんな事件を起こしたのよ。
 

 貴女は集まってきた信者達に一言、誤解だと声を上げるだけでよかった。
 父達の声は聞けなくても、貴女の御託なら信者に届けることが出来たでしょうに!
 どう責任を取るつもり?


 モニカと領民に対する怒りで、息苦しさが胸の辺りに渦巻いている。
 こんなにどす黒いものに心が占められていくのは初めてだ。


 私はドレッシングルームで動けなくなって、うずくまってしまった。


 もう許容範囲を、越えていた。