オルが再び、私を睨んでいる。
 彼は私が流した涙を拭ってくれたけれど、今は離れて。
 それ以上触れては来なかった。



 こんなはずじゃなかった。
 こんな、まるで不倶戴天の敵同士のように睨み合って、対立しているふたり。



 ここは『ありがとう。がんばってね』とさっさと私を、3年前に送り込めばいい。
 得意の耳当たりの良い言葉と、最後に甘いキスのひとつでも贈れば。

 それから貴方は時送りの魔法で10年後に戻り。
 モニカの毒を飲まなかった私を抱き締めて。
『ただいま』と言えばいいの。



「男のくせに泣き虫ね。
 泣き黒子のせい、にしないでね」

「……泣いてない」

「早くして。
 ぐずぐずしてたら、10年後の私が死んじゃう」

「……やる気なしの怖がりなくせに無理するな」

「いいえ?
 今は楽しみなくらい。
 モニカとシドニーを、私の手でぶっ潰せる機会をくれてありがとう!と思ってるくらいだから、早くして」


 怖い顔をしていたのを止めて、笑顔を見せてあげたのに、反対にオルはますます私から離れる。