「本日中なら、夜でもいいと思いますよ。
 ペイジ夫人はクレイトンを離れるその日まで、頑張られる方ですから、日中に電話をしたら注意されるかもしれませんね?」


 母のことを語るフィリップスさんは、本当のことを話してる。
 このひとが私を見守ってくれていたのは、祖父の依頼があったからだけではなく、私がペイジ・ムーアの娘だから、だと分かった。



 フィリップスさんは『明日も参ります』と言ったので、この場はお開きとなった。
 帰りを見送ろうと立ち上がったオルが、彼に助けて貰った御礼を言うと、フィリップスさんはオルの肩を叩いた。


「たった1日でも、一生ものの恋に落ちることはあるかもしれない。
 さっき言った、ジェラルディン嬢を一生このひとと決めているなら、さっさとノックスヒルとムーアに挨拶に行け。
 その時はバスローブは脱いで、普通の服装だぞ、パピー」



 良いこと言った、と満足気なフィリップスさんを見送った。
 今の言葉は多分、本物で借り物じゃないね。




 休息日なのに、起き抜けのシドニーの襲来からバタバタしていた。
 私はティーカップを洗ってくれていたオルに声をかけた。


「お腹が空いたの。
 3年前に行く前に、お昼ごはんと、私のおしゃべりに付き合って」