どうして自分の名前を私に言わせたのか。
 祖父に言うぞと脅迫してきた本人なのに、フィリップスさんはそれを防ごうとしたオルを理解出来ないようだ。



「俺は狼じゃなくて、忠実な成犬ですよ?
 一生このひと、と決めたご主人に自分の名前を呼んで貰えることが喜び、なんですよ」

「……は?」


 ぬけぬけと言うオルに、フィリップスさんは呆れたような反応で。
 私は『一生このひと、と決めた』を聞いて身体中の血が一気に駆け上がって、顔が熱くなった。


 あぁ、そうです、分かっています。
 私は本当に簡単な女なんです。


「……ジェラルディンお嬢さん、こんな耳当たりのいい言葉を吐く奴は、あまり信用されないように」


 そう言う貴方も、私を信用させようと結構言ってましたけど……。


「では、ヴィオン、君の名前で情報開示請求をあげる。
 この部屋からはいつ退去するつもりだ?」

「貴方が帰られたら、直ぐにでも」


 ……オルの言葉には迷いは感じられなかった。
 本当に3年前に戻る気なのね。