「許せない、って何?
 そんなに大きな声でわめいたら、健気なヒロインに見えないよ?
 婚約して気が緩んでるんじゃないの?
 ここは私に何を言われても我慢して、自由自在に流せる涙を見せなきゃ、シドニーを騙し続けられないわよ?
 明日はクレイトンに挨拶に行くのね?
 じゃあ、部屋に置いてある貴女の荷物、出来たら私が大学に行っている時間に持ち出してね。
 渡した合鍵は大家さんに預けておいて。
 ハイパー先輩とお幸せにね。
 私にはもう関わらないで」


 一気にしゃべった。
 皆が呆気にとられて私を見ている。
 勿論シドニーもだ。
 モニカだけが私を睨んでいた。


 私が黙ってるタイプじゃないのは知ってるでしょ。
 もっと言ってやってもよかったけれど、これくらいでやめておく。

 この場に集まった人達にどう思われたっていい。
 彼等はシドニーの知人だ。
 彼とモニカとはもう会わない。
 だから、この人達とももう関係ない。


「私が居なくなった後でなら、どうぞ?
 皆様、モニカから吹き込まれた私の悪口で、せいぜい盛り上がってね。
 悪役は帰ります」

「待って、ジェン!」

 帰る、と言った私を何故か引き留めようとするシドニー。
 

「さっきはキャンベルと呼んだじゃないですか?
 ジェンなんて、もう呼びたくないんでしょ。
 私も呼ばれたくありません。
 さようなら、ハイパー先輩」