「ジェリー、そんなこと言うなんて酷いわ」

「今のは君が言い過ぎだ」


 シドニーは私の傍らを通り過ぎて、わざとらしくよろめいたモニカを支えた。
 モニカが私や家族のことを有ること無いこと話しても庇うのに、私がモニカに対してキツいことを言うと、怒るのね。


 愛って気持ちは、そんなに特別なの?
 愛するモニカが言うことは、どんなに可笑しくても受け入れて。
 愛するモニカを攻撃する私には冷たく出来る。


『世界中全部を敵に回しても、俺は君を守り続ける』
『誰もが貴方を嘘つきだと責めても、私だけは貴方を信じてる』

 そんな文章や台詞を。
 有り得ない、と皮肉げに嗤ったシドニー・ハイパーだったのに。
 愛は、こんなにも簡単に人を変えてしまう。


 かよわくすがってくるモニカを抱き締めるシドニー。
 リビングに居た何人かが、不穏な雰囲気を察してこちらの様子を見にやってくる。


 帰りたい。

 もうここには居たくない。