そういえば私の親友の壺井菜々子は、2年A組の高嶺の花という異名を持っている。

 クラスメイトたちと一線を画すそのクールビュティーな容貌。

 成績は非常に優秀で、蒼夜くんとトップ争いにいそしんでいる。

 普段は物静かだが、いったん口を開くと、毒を含みつつもそれが癖になる魅力的な言い回しで聞き手をとりこにする手腕。
 
 学級委員長という肩書き。


 私は、相談するのに絶好の相手である、菜々子様に悩みを打ち明けてみた。

「我らが菜々子様…!やっぱり、黒木くん、私のこと好きじゃないよね………?」

「うむ。黒木はさ、性格には難ありのように見えるけど、あの外見だからモテモテよ。」

とひじを机についた菜々子様は、わざとらしく大きなため息を吐き出し続ける。

 「女なんて取っ替え引っ替えでしょう。血を吸わせてくれる都合のいい女扱いされてる、って言うのもありえなくはないんじゃない…?」

 ショートボブの毛先をくるくると毒舌女王の菜々子様。
 彼女からは、さすが言い返す言葉が一つとて見つからぬ残酷な現実を頂戴する。

 だよね、だよね、、だよね……。

 結果的に疑心暗鬼に陥った私は、なんとなく黒木くんを避け始めるようになってしまった。