あなたの霊を守ります 霊キャプター宮城の一日

 「何?」 「ああ、吉田さん 居ましたか。」
「何か有ったの?」 「スプリンターフラッシュが、、、。」
「見てたわ。 止まらないようね。」 「それを何とかしたいんだ。」
 「それで私に操作しろと?」 「出来ますか?」
「設計図も無いのよ。 無理だわ。」 「そうですか。」
 「おいおい、吉田さんが無理だとなるとこれはまた大変なことになるぞ。」 「分かってます。 でも打つ手が有りません。」
「これじゃあ止まらないぞ。 どうしたらいいんだ?」 「ボス、念導力を使うんです。 それしか有りません。」
「そんなことをしたらばれてしまう。」 「いえ、誰も気付いてませんよ。 大丈夫です。」
 「分かった。 ジョーに任せる。 誘導してくれ。」 「分かりました。」
二人が念導力を注いでいく。 山の向こうに雷雲が現れた。
「ボス、スパークさせます。」 「頼むぞ!」

 それからどれくらい時間が経ったのだろう? 宮城茂は看護センターのベッドの上に寝かされていた。
「ここは?」 「宮城君、気付いたかね? 看護センターだ。」
「俺はいったい?」 「やっとの思いで車を止めることが出来たんだ。 そしたら君が仮死状態になっていた。 それで、、、。」
 「それでここに搬送したってわけだよ。」 窓際で煙草を吹かしていた川嶋が宮城の顔を覗き込んだ。
「それにしては不思議な事件ばかりだ。 どうなってるんだ この島は?」 「それが分かれば苦労しないよ。」
 「ん? 川嶋さん 危ない!」 宮城が川嶋を見て叫ぶ。
「今度は何だ?」 「いいから座って!」
 川嶋が窓際に座り込んだ所に黄色い矢が飛んできた。 「これはあの時の、、、。」
「まだ何かが動いている。 ここで寝てはいられない。」 宮城がベッドから起き上がると、、、。
 「ダメだよ。 君は仮死状態だったんだ。 もう少し寝てないと、、、。」 「いや、俺はもう大丈夫だ。 とにかくこの島が危ないんだ。」
「何がどう危ないのかね?」 「説明している暇は有りません。 笹尾さんだって狙われかねないんですよ。」
「笹尾君が? なぜ?」 みんなが呆気に取られている中で宮城は看護センターを飛び出していった。
 スプリンターフラッシュ3号はコースの真ん中で木っ端微塵に砕け散っていた。 「これが念導力の為せる業なのか、、、。」
ジョーと宮城の念導力がスパークした瞬間、彼の意識は遥かな過去に飛んでいた。
それと同時にスプリンターフラッシュは時間竜巻に飲み込まれたのだろう。 砂粒のように砕け散っている。
 「もうこいつの復元は無理だな。」 「何を言うの? スプリンターフラッシュの設計図は私が持ってるのよ。」
「誰だ?」 確かに女の声が聞こえたはずなのに姿が見えない。
 「ボス、サイコトーンです。 意識の中で声が聞こえているんです。 気を付けてください。」 「ジョー、、、。」
「西のほうに星が出てます。 その星が頂点を通る頃、その島で何かが起きます。 気を付けてください。」 「何かが起きる?」
「そうです。 スプリンターフラッシュをブレーキダウンさせた張本人が現れるはずです。」 「そうか。 でもそれまでは、、、。」
 「ボス、キャシーとアーシーが何らかの情報を掴んでいます。 18時にコンタクトを願います。」 「分かった。」
コースを出た宮城は管理センターの屋上に上がってみた。 ここからは島の風景がよく見えるんだ。
 もう夕方。 東の空は宵闇に包まれ始めている。
絶壁の上を監視ヘリが飛んでいる。 西の空にはあの星が、、、。
 (あの星が頂点に達する頃、、、。 つまりは午後10時ころだな。) 「宮城 大丈夫か?」
「アーシー、何が分かったんです?」 「その島に黒武の仲間が居るんだ。 気を付けろ。」 「黒武の仲間が?」
「そうだ。 君もよく知っている女だよ。」 「よく知っている女?」
 そう言われて宮城は渚のことを思い出した。 (そういえば渚が、、、。)
「しかし相手はそのことに気付いていない。 コントロールされていることにもね。」 「コントロール?」
「そうだ。 サイコパシーだよ。」 「それでなのか、、、。」
「思い当たることでも有るのか?」 「ええ。 確かに俺を避けている女性が居ます。」
「そうか。 そこまで気付いてるんだな。 ウェザーセンターで騒ぎが有っただろう?」 「ええ。」
「その騒ぎもその女が惹き起こしたんだよ。」 「そうだったんですね。 それで疑問が解けました。」
 「宮城、今夜はその女から目を離すんじゃないぞ。 何かやらかすはずだから。」 「分かりました。」
その時、島の上空を航空自衛隊の戦闘機が飛んでいった。

 さてさてごたごた続きのレーシングセンターではあるが、夕食時ともなると各人各様に賑やかである。
レストランでグループディナーを楽しむ人たちも居る。 自分の家でひっそりと楽しむ人たちも居る。
宮城は食事をしながら何かを感じていた。 (これは何だろう?)
 妖気とでもいうのか、ぞくぞくっと寒気がする。 そんなに寒くはないはずなのに。
「こんな島に妖怪でも住んでるのかな?」 食事を済ませると彼は部屋を出てコースを歩いてみた。
街灯すら無い暗い夜道である。 月がぼんやりと輝いている。
時計は間もなく9時45分。 あと少しだ。
 コントロールセンターの辺りに来ると奇妙な空気を感じる。 「これは何だ?」
「お前は邪魔だ。 近付くんじゃない。】 聞いたことの有る女の声が聞こえた。
 「それは渚だね?」 宮城も神経を集中する。 「お前は邪魔だ。 殺す。】
足が痺れてくる。 「ボス、念導力を!」
ジョーの声が聞こえた瞬間、宮城はまた意識を失ってしまった。
 「ボス! ボス!」 意識を失った宮城の耳元で何度も声が聞こえる。
「ジョー、力を合わせよう。」 「分かりました。」
 真っ暗な闇の中で何かが動いた。 そして、、、。
 「大変だ!」というけたたましい声が響いた。 「何事だ?」
「ボス、男性が狙われました。」 「何だって?」
「管理センターの中です。」 「分かった。」
 一瞬 記憶さえ失ったと思われた宮城はやっと体を起こして管理センターへ急いだ。 「ああ、宮城さん 笹尾さんが、、、。」
「笹尾さんがどうしたんだ?」 「突然に倒れたんです。 訳が分かりません。」
 センター長の部屋に飛び込んでみる。 笹尾は壁に突き立てられるようにしてもがいている。 「これは、、、。」
「宮城さん 何か分かりますか?」 「みんなは部屋から離れてくれ。」
「でもそれでは、、、。」 「いいから離れてくれ。 非常事態だ。」
 川嶋も腑に落ちない顔ではあるが動かないわけにはいかない。 「何か有ったらすぐに呼んでくれよ。」
そう言って部屋を出ていった。 「確かにこれは怪しい。」
 人間が壁に突き刺さるなんて起こりえない。 だとしたら、、、。
宮城が神経を集中し始めるとまた女の声が聞こえてきた。 「あなたは邪魔なのよ。 消してあげるわ。」
「吉田さんだね?」 「違うわよ。 フフフ、あなたには捕まらないわ。」
 念導力を強めていく。 「あなたもやるわね。 でも私に勝てると思ったら大間違いよ。」
「何だ? 焦点が合わない。」 「そう。 あなたの弱点は目よ。 私には勝てない理由が分かったでしょう?」
「ボス サイコプレスを!」 「ギャーーーーーー!」
 ジョーの声が聞こえた瞬間、女の声が消えてしまった。 「これはいったい、、、?」