煩悩過多なイケメンは私に一目惚れしたようです【マンガシナリオ】

千華「へ?」

 ぐるん、と視界が回り気づいた時には、マットレスに背中がついていた千華。

千華「くじょ、くん」

 とろんとした目で、千華を見下ろす樹。

樹「……うるさい。まだ寝てろよ」

 ぽすっと千華におおいかぶさり、再び寝ようとする樹。力を抜いた人体は重たい。

千華「お、重いっ! 九条くん、おきて! 起きてってば!」

 下敷きになっている千華は、バシバシと樹の背中を叩く。「んだよ」と顔を上げた樹だが至近距離で千華と目が合い、徐々に意識が覚醒してきたのか目を見開いた。

樹「! ごめっ」

 千華の上から動こうとした樹。
 と、同時にバンッと大きな音を立てて、体育倉庫の扉が開いた。

真尋「──如月さ……、は?」

 入ってきたのは真尋と涼介、玲那と田崎の四人だ。先頭に居た真尋は、千華と樹の体勢を見て凍えるような冷気を一瞬にして纏った。

田崎「おーおー、中々帰ってこないと思ったら。お前ら、不純異性行為か?」
千華「違います!!」
樹「そんなんじゃねぇ! はっ倒すぞ晴せん!」

 樹は素早く千華の上から退き、体育倉庫を出る。入れ替わるように、真尋が千華に駆け寄った。
 すれ違う瞬間、真尋は鋭い視線を樹にやった。樹は気づいていないばかりか、目元には少し朱が差している。
 それが尚のこと、真尋の神経を逆撫でする。

真尋「如月さんっ、大丈夫ですか」
千華「う、うん」

 真尋が千華に手を差し出して、立ち上がらせる。そこへ涼介と玲那が来た。

玲那「千華ちゃん! トイレに行ったっきり戻ってこないから、心配したんだよ!」
涼介「真尋なんて、田崎の胸ぐらつかむ一歩手前だったもんなー?」
真尋「うるさい」

 玲那は千華に抱きつく。
 千華は「ごめんね、心配してくれてありがとう」と玲那の頭を撫でつつ、真尋へ視線を向けた。まだヒヤリとした空気を纏う真尋。

千華「御厨くん……」
樹「──だから! 扉が中から開かなくなったんだよ、ちゃんと点検してんのか!」

 樹の怒号が聞こえ、四人は樹達に視線を向ける。すると、樹は田崎の首を腕でロックするように技をかけていた。

田崎「わかったから! 俺が悪かったって! ちょ、ギ、ギプッ」

 パシパシと樹の腕を叩く田崎。
 しばらくするとチーン、と魂が抜けたようにだらんとなる田崎。

涼介「あれ、ヤバいんじゃない?」
玲那「ぎゃあー、先生ー!」

 玲那と亮介は田崎を救出に向かった。
 まだ体育倉庫内にいる、真尋と千華。

真尋「……如月さん。大丈夫でしたか? あいつに何かされたりとか」
千華「!」