真尋「まだありますから、全部俺が食べさせてあげますね」
千華「……それじゃ、御厨くんの分がなくなっちゃうでしょ」
涼介「如月さんの言う通りだぞー、真尋。お前、見た目の割にめっちゃ食うじゃん」
真尋「余計な事を言わないでもらっていいですか、そこの人間」
涼介「ついに俺、名前すら親友に呼ばれなくなったんだけど」
玲那「あ! そうだあたし、余分にパン買ってたんだった! それをあげるねー、千華ちゃん」

 がさごそと袋の中をあさる玲那に、「玲那ちゃん女神ですか?」と思った千華。
 しかし袋から出てきたのは、メロンパンに焼きそばパン、サンドイッチと三個も出てきた。

玲那「じゃーん!」
千華「ええっ、三個も? ……玲那ちゃんそれ全部、一人で食べれたの?」

 驚く千華に、玲那は「これくらい余裕だよ」とペロッと舌を出した。

玲那「どれがいい?」
千華「じゃあ、メロンパンをもらってもいいかな」
玲那「はい、どうぞ!」

 メロンパンを受け取り、さっそくパクリと食べる千華。

千華(美味しいっ。……九条くんの事は忘れよう。うん、それがいい)

 はむっ、とまた一口メロンパンに齧り付く千華。

真尋「それ、美味しいですか?」
千華「ん? うん、美味し──」

 千華が食べた所の、すぐ横をパクリと食べた真尋。千華は目を見開く。

千華「…………!?」

 咀嚼し飲み込んだ後、真尋はふっと笑った。

真尋「本当だ、美味しいですね」
千華(〜〜〜〜!!)

 見つめ合う、顔が赤い千華と笑みを浮かべた真尋。

涼介「ひゅー、お熱いねぇ。のぉ、名取殿」
玲那「そうですなぁ、藤田殿〜」

 そこにニヤつきながら、ヤジを入れる涼介と玲那。

千華「玲那ちゃんまでっ!」

 ぐへへ、とどこのおじさんだと言いたくなる笑い声を出す二人に、さらに恥ずかしくなる千華。

真尋「……如月さん」
千華「っ、なに? 御厨くんも、二人になんとか言ってよ!」

 若干怒って千華は言うが、真尋は千華の耳元に顔を寄せ小さくささやいた。

真尋「いつか、如月さんを味わってみたいです」
千華「…………」

 火山が噴火したのかというくらい、ボフンッと顔が赤くなった千華。

涼介「え、なに。如月さんになんて言ったんだよ真尋!」
玲那「あたしも気になる! 教えてよ御厨くん!」
真尋「それは秘密です」

 真尋は妖しげな笑みを浮かべ、主に玲那に向かって言った。「俺見えてる? おーい」と小さく涼介が言ったのは、誰も聞こえていない。

玲那「そう言われると、ますます気になるぅ〜」

 きゃぁー、と頬に手を当て、身をくねらせる玲那。
 一方千華はと言うと、プルプルと震えていた。

千華(──それは煩悩過多だよ、御厨くん!!)