頼人が、小説を書き終わった頃には、12月になっていた。 竹下通り、いつもの喫茶店で私の前でパソコンを広げた頼人は、私に何も言わなかった。 何も言わず、ただ、パソコンを広げるだけ。 「あ、読めってこと?」 と私は言ってはいけないことを言った。 そして、読み終わって。 「うん、これ、すごく面白い!」 もっと言ってはいけないことを言った。 頼人は、煮えきらないような表情で、黙ってパソコンを閉じた。 私は、頼人の努力を認めてしまったのだ。