明治神宮前駅で、ちかげは引っ張っていた私の腕を離した。


「はい、あなたの切符」


と言って、渡された切符を前に、「あの、どこへ行くんですか?」と聞くと、ちかげは「ついてくればわかるわよ」と尤もなことを言った。


「それとも何? あなたは何でも聞けば必ず答えが返ってくるとでも思ってるの? そんな調子じゃこのコンクリートジャングルでは生きていけないわよ」


ちかげは、歩くのが早かった。


とんがり靴のサラリーマンを、便所サンダルで追い抜いていく。


ヒールの私は、ついていくのに必死で、電車の乗り換えなんかの時に、何度か見失いそうになった。


それでも、ちかげは、一切振り返らない。


別についてきてもどっちでもいいと言わんばかりに、ずんずん歩いていく。