翼「へ?」

 軽く肩を押され、気づけばソファーの上に仰向けに倒れ込んでいた。

翼「ちょっと、綾人君っ」

 翼を見下ろす綾人は、面白くないとでも言うようにムスッとしていた。

綾人「俺、翼ちゃんと二人っきりで仲良く過ごせると思ったのに」

 徐々に近づいてきた綾人は、翼の耳元で甘い声で言う。

綾人「悪い子だ。ご主人様を嫉妬させるなんて、お仕置きが必要だね」

 まずは……、とそのまま翼の耳をカプリと噛んだ綾人。
 そしてチュッとリップ音を響かせて、耳にキスをする。

翼(っ……!?)

 ピクリと体を震わせた翼に、満足げな表情を浮かべる綾人。
 それを避けるように、顔を横に向けた翼は首筋をさらけ出すことになる。
 綾人は首筋へ唇を寄せた。
 そしてちろり、と舐められた翼は、またしてもピクッと震える。
 口元に手をあてて、声を押し殺す事に集中した。

綾人(──……)

 翼の瞳に、若干涙が浮かべられているのを見て、綾人は体を起こそうとした。

 ──その時、ギシッと足音が聞こえた。
 その音の正体は、寝ぼけながらもリビングに来た詩音のもの。

 詩音はコップに水を注ぎ、ごくりと飲む。
 シンクにコップを置き、「ふわぁ」とあくびをしてリビングを出て行く。
 そして、足音が遠ざかって行った。


 一方、翼と綾人は。
「抱きしめられて、翼の胸元に顔が埋もれている綾人」という状況になっていた。
 かすかに見える綾人の目元は、これでもかと目を見開いている。
 翼も、自分が抱き寄せたのだが、顔を驚きに染めていた。

翼(──!?)