圭太は真剣な表情で顎に手を当てて考え込んだ。


「新種のウイルスが発見されても、街を封鎖させるなんてそう簡単なことじゃないと思うんだ。まずはどういうウイルスなのか研究して、それがどれだけ驚異的なのか調べる。それから街を封鎖するかどうかの議題に入る。こういう流れじゃなきゃ、おかしいだろ? それなのに、今回は異様に早く封鎖された気がするんだ」


確かに、ウイルスに関する情報がまだあまり出ていない段階から、街が封鎖されていたかもしれない。
圭太が言う順番が狂っている。


「それってつまり、どういうことになるの?」

「これはただの憶測だけど、もしかしたらウイルスがこの街に充満することが事前にわかっていたのかもしれない」


その言葉に目をむく。


「なにそれ。それじゃあ誰かが意図的にウイルスを撒いたってこと?」

「わからないけど、その可能性もあるかもしれないってことだ」


圭太は再びあるき出し、私はその後をついていく。
もしも圭太の言う通り誰かが意図的にウイルスをばらまいていたのだとすれば、それは一体なんのため? そして誰がしたことだろう。
考えてみてもなにもわからない。