「新種のウイルスが出てきて、その詳細はまだわかってないってことだったよな。空気感染する可能性もあるのかなって、ふと思ったんだ」

「え?」

圭太の言葉に私はまばたきを繰り返す。
どうして今そんなことを言うんだろう?
そう疑問が浮かんでくると同時に、ガスマスクをつけて教室を訪れた自衛隊員たちを思い出す。


「ユカリを運び出すのにも随分時間がかかったよな。ユカリは呼吸もままならなくなってたのに」

「それって、どういう……?」


質問しながらも全身に氷水を浴びせられたような気持ちになっていた。
本当はこれ以上質問しなくても、私でも理解できている。
だけど受け入れたくなくて、拒絶しているのだ。


「ユカリは、感染してたのかもしれない」


わかっていたことだったけれど、圭太から直接そう言われると頭をハンマーで殴られたような衝撃があった。
ユカリは新種のウイルスに感染していた。

おそらく、昨日の朝にそれが発症している。
そしてそれが空気感染するのだとしたら……?