できれば一緒に居てほしかったけれど、点滴がどのくらいの時間で終わるのかわからないし、仕方ない。


「少し痛むぞ」


点滴の準備を終えた父親が注射針を直の腕に突き刺す。
その瞬間「いってぇな」と直が舌打ちをした。


「悪いね。私は研究者であって医療従事者じゃないものでね」


意地悪い声色で言っているけれど、これくらいの違反行為は常にしてきたのだろう。
その手際が良かった。


「少し、チクっとするからな」


同じことを言われて私の腕にも針が刺される。
点滴パッグに入っている透明な液体がジワジワと体内へ入り込んでくる。

これで、全部が終わる……。
そう思い、私は目を閉じたのだった。