服の袖をまくりあげてみると、そこにも赤い斑点が見える。
ふたりとも感染していたのだ。
だから、非感染者に殺された……!

父親が襲ってきた非感染者から母親を守るために立ちふさがる姿が思い浮かんだ。
ナイフを持った相手から逃げて玄関へ走る。
しかし途中で追いつかれてしまって、母親を守るために振り向いた父親が胸を刺された。

それに気がついた母親がここまで駆け戻ってきて、そして同じように刺されてしまった。
ふたりは助け合いながら逃れようと玄関へ手を伸ばすけれど、その手がノブに届くことはなく、崩れるようにして折り重なり、絶命した。

一連の光景が流れるように連想されて気がついた時私は悲鳴を上げていた。
ふたりの体にすがりつき、大声を上げて泣いていた。


「薫!」


車から降りてきた圭太が私の体を後ろから抱きしめる。


「薫。大丈夫だから、薫」


なにも言われても何も聞こえなかった。
殺された。
私の両親は非感染者に殺されてしまった。

その事実だけで目の前が真っ暗に染まる。
どれだけ圭太が声をかけてくれても現実はなにも変わらない。
私は……圭太の父親の研究によって、殺されたんだ。