もしかして父親は俺の気を引き締めるためにここへ連れてきたのかも知れない。
だとすれば、やはり勉強をさぼっていた俺のことを怒っていたのだ。
申し訳なさがこみ上げてきたとき「座れ」と、目だけで丸椅子へ促された。
それは学校の保健室に置いてあるような安っぽいものだった。


「ごめんお父さん。これからはもっと真剣に勉強するよ。この棚に置いてある薬品だけでもちゃんと理解できるようにするから」


薬品棚へ視線を向けたままそう言っていた途端、チクリとした痛みを腕に感じて飛び上がっていた。
見ると父親が服の上から俺の上に注射針を突き立てている。

透明な液体がみるみる体内へ送り込まれていくのを見て、咄嗟に父親の手を振り払っていた。


「なにすんだよ!?」


いくら父親だと言ってもやっていいことと悪いことがある。
人に許可なく注射を打つなんてもってのほかだ。


「これで大丈夫」


怒り狂う俺をよそ目に父親は安堵したようにそう呟いたのだった。