女性と男性の服は破れて血がついていて、胸や腹を刺されたことがわかった。
女子生徒に目立った外傷はなさそうだけれど、枕元には殻になったグラスと薬の瓶が置かれている。
瓶の中身も空だった。

少女はすでに息絶えているにも関わらず、両親の手をきつく握りしめていた。
その手もまた血で汚れている。
その光景を見た私は床に両膝をついてしまった。

自分と年齢の変わらない少女が家族で感染し、両親を殺して自害した。
その衝撃的な光景に呼吸すら忘れてしまいそうになる。


「薫、あまり見ないほうがいい」


圭太がそっと肩に手を置いてくる。
けれど私は動くことができなかった。
彼女はどんな思いで両親を殺したんだろう。

自殺することもできず、自衛隊員に撃ち殺してもらおうとしていた自分の甘さを痛感する。


「下にいるから」


そんな圭太の声は、もう私の耳に届いていなかったのだった。