歪んだ笑みを浮かべて包丁の刃先を私の頬に当てる。
スッと冷たい感触が頬にあたり、全身が凍てついていく。
少しでも動けは肌が切れてしまう中、私は1ミリも動くことができなくなってしまっていた。


「さぁ。どうやって死にたいか答えて貰おうか?」


彼がグッと顔を近づけて質問する。
その息は悔しいけれど美味しそうに感じられた。
こんな時でも食欲があるなんて、我ながら情けなくなってしまう。


「好きにすれば」


そう言い放ち、覚悟を決めて目をキツク閉じる。
彼は私の頬を切り裂くだろうか。
それとも腹部に包丁を突き刺すだろうか。

どちらにしてもかなりの痛みを感じるに違いない。
そのときに備えて奥歯をきつく噛みしめる。
しかし、いくら待ってみても痛みは私の体を貫くことはなかった。

それよりも先にドサッとなにかが倒れる音が聞こえてきて目を開いた。
そこにいたのはバッドを握りしめた圭太だったのだ。