でも。
『月海、君にだけは私の味方であってほしいのだけど』
『ごめんなさい、それでも私の一番はイカネさんです』
失礼な考えを察したツクヨミノミコトからの苦情は一蹴する。
『一心同体な私たちの絆はその程度だったの?』
『ごめんなさい、それでも私の一番はイカネさんです』
『私の話を聞いてくれる?』
『もちろん。それでも私の一番はイカネさんですが』
『うわああぁぁぁん! オモイカネのどこがいいってゆーんだ!』
『イカネさんは、私の初めてのお友達なので……』
『出会った順番のせい? 私が先に話すことができていれば、私が月海の一番になれてた?』
『それは………』
先に出会った人を優先するのが正解なのか。
そんなことはない。
後から出会う人の方が気が合うことだってあるだろう。
友人は、皆平等に扱いたい。
理想はそうでも、現実はうっかりイカネさんを一番に考えがちだ。
反省はしていない。
想いの重さなんて、人それぞれじゃないか。
同じだけの想いを返せるなんて、保証はできない。
返してもらえなくても、その人に八つ当たりすべきではないはずだ。
なんて、保身じみた事を考えてしまう、悪い私。
どうしても初めてのお友達にかける想いが大きすぎて、二番目以降が軽くなりがちになるのには反省。
交際の申し込みじゃないのだ。
わざわざ一番じゃないと切り捨てることもなかった。
言うべき事ではなかった。
ここは私の落ち度だ。
私なんかと親しくしてくれる皆様に感謝を込めて、平等に接していかなければ不満が出る。
平等に接しているつもりでも、相手が望んでいる対応でなければ不満が出る。
不満は争いの種になり、芽吹き、爆発すれば刺されるかも。
いやはやなんと難しい。
『いいもん。長期戦は覚悟の上だもん。いつか私が月海の一番になるから! オモイカネから親友の座を勝ち取ってやる!』
拗ねてしまわれたようだ。
ただ言ってることが、恋人持ちの相手を狙う当て馬なんだよなぁ……。
ツクヨミノミコトの愛を一身に受けて、流されそうになるが、それは少々危険な誘いのような気がして。
ツクヨミさんに毒されて、道を踏み外したらどうしよう、なんて思っちまうんですよ。
誠実な人より、危険な人に惹かれるアレかな。
もしかして将来私は、イカネさんに別れを告げてツクヨミさんとくっつく系……?
スサノオノミコトがやれやれと息をつく。
「ご主人様、ツクヨミノミコトに何か言われましたか?」
しばらく無言でいた私を心配してくれたのだろう。
心配そうなイカネさんに微笑んだ。
「友達って、なんだろうと思っただけだよ」
あらぬ方向に迷走しかけたことは黙っておく。
イカネさんは目を見開き、よくわからないというように首を傾げた。


