翌朝。
「……様、起きてください」
浅い眠りだったから、その声に目が覚めた。
目を開くと、マイラではなく、イクスがいた。
この帝国にしては珍しい黒髪と整った顔が目の前に……
「おはようございます、ご主人様」
「えぇ。おはよう、イクス」
そのことに少し動揺したけど、それを顔にも声にも出さないようにした。
もうこれからはイクスに起こしてもらうことになるのね。
まぁ、マイラは私の専属侍女というわけではなかったけれど。
公爵家の騎士達と同じく、誰も私の侍女になりたがらなかったから。
専属ではないけど、いつも起こしてくれていた。