どうやら道行く人達が立派な馬車から降りてきたジルさん達を見て、思わず足を止めてしまったようだった。私にもその気持はよくわかる。

(あ……っ! こんな場面見られたら噂になっちゃう……!)

 気持ちはわかるけれど、変な噂を立てられたらたまらない。ジルさんとヘルムフリートさんの名誉に傷がつくようなことは有ってはならないのだ。

 私は大急ぎでお店の鍵を開け、ジルさんとヘルムフリートさんに中に入って貰う。休業日のプレートを掛けているから、人が入ってくることはないだろう。

 やれやれ、と一息ついていると「アン、この荷物はどこに置く?」と、聞かれ、私はずっとジルさんに荷物を持って貰っていたのだと気付く。

「す、すみません……!! ではこちらにお願いします!」

「うむ」

 キッチンに続く扉を開け、テーブルに荷物を置いて貰う。
 私には重かった荷物をジルさんは軽々と運んでいる。全く重さを感じさせない動作に、よく鍛えられているんだな、と感心する。

「有難うございます! すごく助かりました!」

「構わない。これぐらい軽いものだ」