「それは助かる。しかし迷惑ではないのか?」

「他の花を育てるついでですから、大丈夫ですよ。それにずっと花を楽しんで貰いたいので、そのお手伝いと思って下さい」

 私はにっこりと微笑んだ。

 これは紛れもなく私の本心だ。私が育てた花が人々の癒やしになるのなら、こんなに嬉しいことはない。

「……有難う。大切に育てると約束しよう」

 ジルさんもにっこりと微笑んだ。
 そして舞い散る花の幻影。
 だけど花が以前よりグレードアップしているような気がするのは、私の欲目なのだろうか。

 ジルさんは花束と鉢植えを大事そうに抱えると、外に待たせていた馬車に乗り込んだ。

「有難うございました。お気をつけて」

「ああ、また来る」

 私はジルさんの乗った馬車を見送って、買ってくれた花が元気でいてくれますように、と祈る。

「さーて、そろそろ閉店しましょうかね」

 ちょっと早い時間だけれど、ジルさんに喜んで貰えた満足感で、今日はもう閉店しようと準備を始める。

(そう言えば、マイグレックヒェンがそろそろ満開かな……)