「あ、実物を持ってきますので、少々お待ち下さいね」

 私は温室に向かい、育てているアルペンファイルヒェンの中から一番元気そうな子を選ぶ。

 たくさん種類があるアルペンファイルヒェンだけど、この品種はシュヴァンと言って、純白の白鳥が羽を広げて飛び立つような、上品な花弁が特徴だ。

「お待たせしました! こちらになるんですけど、地味でしょうか?」

 人によっては白い花を地味に思うかもしれないけれど、シュヴァンは花弁が上品なフリルにも見えて、とても可愛らしいと思う。

「……いや、これが良い。俺の好みだ」

「良かったです! あ、水やりは表面の土が乾いてからあげて下さいね。その場合は上から水をかけるんじゃなくて、葉を持ち上げて根本から水を注いでください」

「む……そうか。わかった」

「上手く育つと何度でも咲いてくれますよ。春になって花が減って、葉や茎も枯れたり黄色く変色してきたら休眠させてあげるんです。もし良かったら花が枯れた後持ってきてくれたら、私が休眠明けまで面倒を見ますよ」

 騎士団の人にそこまでお手入れさせるのもアレなので、夏越しの間はこちらで預かろうと思う。