美男子さんは完成した花束を眺めると、嬉しそうに頷いた。相変わらず花が舞う幻は健在だ。

(顔が良すぎて辛い……!)

 綺麗なものが好きな私でも、美男子さんの笑顔は心臓に悪かった。きっとこの人はその凶悪な美貌で魔物を狩っているに違いない。

「お気に召していただけて嬉しいです。……あ、そう言えばお客様で騎士団の方がいらっしゃるんですけど、ヴェルナーさんってご存知ですか?」

 前回ヴェルナーさんが来た時、同僚にこのお店を紹介してくれると言ってくれていたな、と思い出す。だからこの美男子さんはヴェルナーさんからこの店の話を聞いて来てくれたのかもしれないと推理する。

「……ああ、ヴェルナーか。奴のことは知っているが、この店に来ているとは初耳だな」

(……え? そうなの……?)

 私の予想は見事にハズレた。てっきりヴェルナーさんの紹介だと思っていたのだ。

「そうなんですね。てっきりヴェルナーさんから紹介されてお越しいただいたのかと勘違いしていました」

「奴からはこの店の話は聞いていないな」

(じゃあ、たまたまこの店を見つけたのかな……? 王宮から遠いのによく見付けられたなぁ)