しかし、魔法を維持するということはアンネリーエもまた、目覚めないということだ。

(くそ……っ!! 一体どうすれば……っ!!)

 ジギスヴァルトは、アンネリーエのために何も出来ないもどかしさに、胸が傷んで苦しくなる。

 とにかく今は、首謀者であるフライタークから”アクア・ヴィテ”の製造方法を聞き出し、その情報を元に特効薬の研究と実用化を急がなければならない。
 アンネリーエ以外にも”アクア・ヴィテ”の被害にあった人間はたくさんいるのだ。

 アンネリーエの為に、自分にも出来ることはないかと悩んでいたジギスヴァルトは、いつの間にか「ブルーメ」の前に来ていた。
 アンネリーエを救出したものの、一睡もできず精神的にも肉体的にも疲労していたのだろう、癒やしを求めて無意識に向かっていたのだ。

 遠征に行き、不眠不休で何日も戦い続けた時ですら、ここまで疲弊したことはなかったのに、とジギスヴァルトは思う。

 店は一見、いつもと変わらない様子でその場にあった。
 扉を開ければアンネリーエがいて、花が咲くような笑顔で自分を出迎えてくれるのではないか、と錯覚してしまいそうになる。