フライタークの言葉が頭の中に響き、頭痛とともに吐き気と悪寒に襲われ、私の意識が朦朧となる。

(……ジルさん……)

 薄れていく意識の中、私は大好きな人の面影を思い出す。

「────アン……っ!!」

 私の名前を呼ぶ声に、目を薄っすらと開けてみれば、涙でぼやけた視界にジルさんの姿が映る。

 たとえそれが、私の願望が見せた幻だったとしても、最後に見た光景がジルさんの姿で本当に良かった、と心から思う。

 きっとこのまま意識を失い、目覚めた時にはもう、私は薬の依存症で正気を失い、違う人間のようになっているだろう。

 そんな醜い私の姿が、彼の記憶に残るぐらいなら、せめて──……

 光が降り注ぐ温室で、一緒に過ごしたあの穏やかな時間だけが、貴方の心に残りますように──と、私は切に願った。