ぼんやりとしていた私は、ヴェルナーさんの言葉に正気に戻る。

「はは、残念」

 ヴェルナーさんはそう言うけれど、運んで貰うなんてとんでもない。街の人に見られたらあっという間に噂になってしまう。

「大丈夫ですかっ?!」

 ヴェルナーさんと話していると、通報を受けたのだろう、衛兵さんたちがやって来た。そして倒れている酔っぱらいたちの惨状を見て顔が青くなっている。

 ヴェルナーさんが衛兵さんたちに指示を出し、酔っぱらいたちは衛兵さんたちに拘束され運ばれていった。
 命に別状は無さそうなので、これから拘留所で手当を受けた後、尋問を受けるのだろう。
 私は彼らに指示した黒幕の正体がわかればいいな、と思う。



 一波乱あったものの、お店に戻った私はヴェルナーさんにさっき起こった出来事を説明した。そして私を守ってくれた髪留めのことも。

「ええっ?! 団長と師団長が?! アンちゃんにその髪留めをっ?!」

 ヴェルナーさんはジルさんとヘルムフリートさんがこの店の常連だと知り、何故かショックを受けている。

「うわ〜〜! 知らなかった……っ!! マジか……団長が……っ」

「すみません……てっきりご存知だと思っていました」

「……いや、アンちゃんは何も悪くないよ……。ああ、でもそっか〜〜! そう言うことか〜〜!! 気づけよ俺……っ!!」

 何やら考えていたヴェルナーさんが、何かに気付いたのか、更に思い悩んでいると……。

「アンっ!! 無事かっ?!」

 店のドアベルが鳴ったと思ったら、ジルさんが慌てた様子で店に飛び込んできた。