そしてジルさんが用意してくれていた馬車は、以前私に贈ると言ってくれた馬車だった。
 でも以前より綺麗に改装されていて、なんとなく女性用っぽく見えるのは考え過ぎだろうか。

 私は馬車に揺られ、流れる景色を眺めながら、ぼんやりと婚約式のことを考える。

(何事もなく式が無事に終わっていれば良いけど……)

 ──この時の私は、今回の婚約式がどれだけ注目されていたのか全く気付いていなかった。
 そして婚約式の装花を見た貴族たちから広まった噂が、社交界で話題になることも。