お店で売る花の下処理を済ませ、お店の扉に掛けたプレートを「営業中」にひっくり返す。毎日行うこの行為で、私は仕事モードに切り替わるのだ。

「アンちゃん元気かい? 今日もいつもの頼むよ」

「あ、ロルフさんいらっしゃい!」

 ロルフさんはこのお店の近くにある宿屋を経営している常連さんだ。今は宿屋の経営を息子さん夫婦に譲り隠居の身だけれど、毎週宿屋に飾る花を買いに来てくれる。

「ホントは毎日アンちゃんの顔を見に来たいんだけどねぇ。花が長持ちだからなぁ。俺んとこは助かるけどよ、商売上がったりじゃないかい?」

「フフフ。大丈夫だよ。毎日お客さんが来てくれるしね」

 ロルフさんは昔から私を孫のように可愛がってくれる。

「なら良いけどよ。アンちゃんのところの花は色が綺麗だからな。宿泊客からも評判がいいんだぜ」

「ホント? うちの子達を褒めて貰えて嬉しいな! 心配してくれて有難うね」

 ロルフさんに頼まれた花を選んでいると、お店のベルが鳴り、お客さんが来たことを教えてくれる。

「いらっしゃいませ、少々お待ち下さい」