ご多忙な伯爵様に私のお店まで来て貰う訳にはいかないので、打ち合わせをするなら私が足を運んだ方が良いだろう。
 ……お店にお貴族様をお迎えするようなスペースなんて無いし。
 
 ちなみにジルさんとヘルムフリートさんも高位すぎる貴族だけど、あの二人は別枠だ。

「はは、今回は仕事の話で来て貰いましたが、いつでも遊びに来てくれて構いませんよ」

 伯爵様が私にそう言うと、お姉様方も伯爵様の言葉に同意してくれる。

「そうよ! またいつでも遊びに来て頂戴! アンさんともっとお話してみたいわ!」

「今度お店の方にお邪魔してもいいかしら?」

「私もアンさんのお店に行ってみたい! フィーネばっかりずるい!」

「ウフフ、アンさんのお店はとても居心地がいいのですわ! アンさんの手作りプレッツヒェンもすごく美味しく……あっ!」

 フィーネちゃんが”しまった!”という表情をして口を押さえる。
 そんなフィーネちゃんをお姉様方が放っておくはずがなく、尋問されたフィーネちゃんは呆気なく自白した。

「なんですってっ?! そんなに美味しいお菓子を隠していたですって?!」