バターと砂糖が焼けた香ばしさと、クラテールの爽やかな風味が溶け合ったプレッツヒェンは、絶妙な甘さと歯ごたえで、今まで食べたどのお菓子よりも美味しかった。

 ヴェルナーは、プレッツヒェンのあまりの美味しさに、思わず全て食べてしまいたい衝動に駆られたものの、アンとの約束は守らねばならないと我慢する。

 そしてヴェルナーはアンの笑顔を思い出し、その笑顔を少しでも忘れないようにプレッツヒェンの袋と花束を大事に抱え直すと、妹が待つ家へと軽い足取りで向かう。

 ──その姿は、まるで大切な宝物を手に入れた少年のようであった。





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 アンの魔法が<再生>だと知ったジギスヴァルトとヘルムフリートは、騎士団長の執務室でアンの処遇と今後のことを相談していた。
 人払いがされた部屋にはヘルムフリートにより防音の魔法がかけられている。

「アンさんが持つ属性については出来るだけ知られないようにしないといけないね。取り敢えず報告するのは陛下と宰相閣下かな」

「……うむ。……しかしアンを取り込もうとしたり、軟禁しようとしたりしないだろうか」