麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!

赤い巣、リバース!/その16
多美代


なんと、この状況で私が指名された…

総長は遠慮なしに本郷を語れというが…

私は一体、何をどうみんなの前で話せばいいんだ

おけい…

私は気が付くとおけいに目を向けていた

ヤツ、何かを発信してきてる

何ななんだ、おけい、それって…

私は今、何を訴えればいいんだ!

デキの悪い頭に向かって何度も問いかけてるが、応答はない

...


とりあえず、こういう時は深呼吸だ

私は発言に立つ前に、座ったままで大きく息継ぎをした

そしたら、おけいの目から発してきたメッセージが、脳内に届いた気がしたよ

”本郷の覚悟を目の当たりにした人間だけが語れる思い…”

そうか!

私を含め、後の3人は”それ”が語れる立場なんだわ

よし…

なら、その角度からでありのままだ…

...


「…総長が言われた通り、私は覚悟を決めて西咲に乗り込んだ麻衣を眼前にして、半殺しにしてやりたいという思いに強く駆られました。それは我慢できない程…。しかし、当事者は総長と本郷でしたから、私は静観していました。そして、ヤツの小指が折られた時のボキって音がこの耳に届いた時、私は本郷が謝罪の気持ちはあるが、反省しているという言葉は決して口に出せないと言い張った真意が見えた気がしたんです」

私の発言に、ここにいる全員の食い入るような視線を感じる…

このプレッシャーに負けたら、みんなには届かないんだ

私は一呼吸置きながら、そう自分に言い聞かせて話を続けた

「…それは、覚悟をもって及んだ自らの行動の重さを、安易に否定できないというこだわりからなんだろうと…。本郷が総長を火の玉に来れない状態にしてまで駆られた行動には、後悔の念を入りこめさせることなど、断じてできなかった…。そう思えるんです」

ふと総長に目をやると、総長は下を向いて小さく頷いていた

あの時のこの人の気持ち…

それをみんなに伝えるんだ!

「…一方で、その手段の対象にした総長に対しての非礼は詫びたいと…。なぜかそんなヤツの気持ちを感じました。その本郷の覚悟を目の当たりにした人間としては、ヤツの覚悟をもって針のむしろを承知で戻りたいという意気を察すると、皆さんが言ったような感情も当然ありますが、さあ、どうなんだろうか…。そんな思いがそう反して…、即反対には至れませんでした」

私は何かに取り憑かれたように、割と滑らかな滑舌でしゃべり抜いたと思う

みんなは静かに聞いてくれてたよ

おけい、私はこんなとこが限界だ

後は頼む…