赤い巣、リバース!/その6
ケイコ
荒子さんは隣に座っている恵川さんに目くばせした
どうやら起立してのお辞儀は省略させるようだ
「…では、のん子の問いかけに答えるよ。私はこの際、レッドドッグスを南玉に戻し、走り部隊の主軸を担わせたらどうかと思う」
ザワザワザワ…
再び会場内からざわめきが起こったが、これはさっきより一段と大きいものだった
荒子さんは今まで、私と接する際も明言はしなかったが、ドッグス復帰の青写真はなんとなくメンバーも察しているようだというシグナルを私は感じていた
無論、メンバー全員ではないという前提で…
多美もそれに近いこと言ってたし
となると、麻衣の前段となる”ここ”だよね
一体、ここではどんな展開に向かうんだろうか
...
「まず、賛成意見を述べてもらうんで、とりあえず聞いて欲しい」
総長は再度、恵川さんに視線を送った
「じゃあ、私からでいいかな…」
ここで席を立ったのは恵川先輩だった
そうか…、この人には総長も今日の”流れ”を共有させていたんだっけ
「実は数日前、たった今脱退決議された木戸先輩から、今回の和解申し入れがあったのよ。まずはドッグスを返すと…。そんで、今後はキャビネット側から都県境全体の新しいフレーム作りの過程で、可能な限りお互い共生できる関係に努めていきたいと言うことでね」
この場のメンバーは全員、食入るように恵川さんの言葉に注目しているよ
「…ドッグスは南玉の重鎮にいわば連れ去られた形だったから、”その人”が戻すからってことなら、我々もこうやって組織の再編にかかってる訳だし、荒子から相談されて、私は元執行部の一員として奴らに含みはあるが、大局を考えて賛成の立場をとったわ。ついでに言うと、奴らが戻ってきたとして、監視監督は妥協なくビシビシやるわ。それで、新生南玉連合の実戦部隊の主力として育てていくつもりです」
何とも力強い意見と言うか、もはや宣言に近いかな(苦笑)
...
「あの、いいですか…」
次に挙手したのは…
ああ、1年の冴木さんだ
「ああ、さえ、意見があれば遠慮なく言ってくれ」
「はい…。総長の提案理由と、今のいづみ先輩の意見は十分納得できます。私も実戦部隊は即戦力で一時たりとも欠かせないと思ってますから。ドッグスなら十分、その任を賄えるだろうし…。そもそも、ドッグスは3年前の協定をクリアして、やっと創設できた南玉待望の公認チームでした。彼女たちを過去のしがらみを超えて迎え入れることも、やぶさかではないと考えます。でも、ウワサ程度ではドッグスカムバックを耳にしてても、私達は今日、初めて正式に聞かされた訳なんで、即断はちょっと…。あの…、いくら何でも無理かと…」
これを受けて、高津先輩がフォローだ
「さえの懸念は正論よ。荒子、ここは今日いきなり結論を出さなくても…。みんな、心の整理もあるでしょうし、各々よく考えて後日採決をとったらどうかな?」
ここで議長の荒子さんが口を開いた
「のん子とさえの今の意見は、要はドッグスを戻す必要性を認めた上で、ただ、今までの経緯を踏まえれば、感情的な面からの戸惑いがハードルだということだよな?」
「はい、そうです…」
「そうね。…さえは、さすがに口にはできなかったようだから、この際私から言わせてもらうけど、ドッグスは本郷に加担して、あっこと鷹美を襲ったのよ。許せないって気持ちは、ここにいる誰もが思ってることでしょう。ただ、そんなことは百も承知で、縛られたまま足を折られた荒子や、私たちの後見役である黒原さんらが考えた末の提案だろうから、それも無視はできない…」
多美からは聞いてたけど、中間派の高津先輩‥、なんともバランス感覚が優れたポジティブな人だなあ…
ケイコ
荒子さんは隣に座っている恵川さんに目くばせした
どうやら起立してのお辞儀は省略させるようだ
「…では、のん子の問いかけに答えるよ。私はこの際、レッドドッグスを南玉に戻し、走り部隊の主軸を担わせたらどうかと思う」
ザワザワザワ…
再び会場内からざわめきが起こったが、これはさっきより一段と大きいものだった
荒子さんは今まで、私と接する際も明言はしなかったが、ドッグス復帰の青写真はなんとなくメンバーも察しているようだというシグナルを私は感じていた
無論、メンバー全員ではないという前提で…
多美もそれに近いこと言ってたし
となると、麻衣の前段となる”ここ”だよね
一体、ここではどんな展開に向かうんだろうか
...
「まず、賛成意見を述べてもらうんで、とりあえず聞いて欲しい」
総長は再度、恵川さんに視線を送った
「じゃあ、私からでいいかな…」
ここで席を立ったのは恵川先輩だった
そうか…、この人には総長も今日の”流れ”を共有させていたんだっけ
「実は数日前、たった今脱退決議された木戸先輩から、今回の和解申し入れがあったのよ。まずはドッグスを返すと…。そんで、今後はキャビネット側から都県境全体の新しいフレーム作りの過程で、可能な限りお互い共生できる関係に努めていきたいと言うことでね」
この場のメンバーは全員、食入るように恵川さんの言葉に注目しているよ
「…ドッグスは南玉の重鎮にいわば連れ去られた形だったから、”その人”が戻すからってことなら、我々もこうやって組織の再編にかかってる訳だし、荒子から相談されて、私は元執行部の一員として奴らに含みはあるが、大局を考えて賛成の立場をとったわ。ついでに言うと、奴らが戻ってきたとして、監視監督は妥協なくビシビシやるわ。それで、新生南玉連合の実戦部隊の主力として育てていくつもりです」
何とも力強い意見と言うか、もはや宣言に近いかな(苦笑)
...
「あの、いいですか…」
次に挙手したのは…
ああ、1年の冴木さんだ
「ああ、さえ、意見があれば遠慮なく言ってくれ」
「はい…。総長の提案理由と、今のいづみ先輩の意見は十分納得できます。私も実戦部隊は即戦力で一時たりとも欠かせないと思ってますから。ドッグスなら十分、その任を賄えるだろうし…。そもそも、ドッグスは3年前の協定をクリアして、やっと創設できた南玉待望の公認チームでした。彼女たちを過去のしがらみを超えて迎え入れることも、やぶさかではないと考えます。でも、ウワサ程度ではドッグスカムバックを耳にしてても、私達は今日、初めて正式に聞かされた訳なんで、即断はちょっと…。あの…、いくら何でも無理かと…」
これを受けて、高津先輩がフォローだ
「さえの懸念は正論よ。荒子、ここは今日いきなり結論を出さなくても…。みんな、心の整理もあるでしょうし、各々よく考えて後日採決をとったらどうかな?」
ここで議長の荒子さんが口を開いた
「のん子とさえの今の意見は、要はドッグスを戻す必要性を認めた上で、ただ、今までの経緯を踏まえれば、感情的な面からの戸惑いがハードルだということだよな?」
「はい、そうです…」
「そうね。…さえは、さすがに口にはできなかったようだから、この際私から言わせてもらうけど、ドッグスは本郷に加担して、あっこと鷹美を襲ったのよ。許せないって気持ちは、ここにいる誰もが思ってることでしょう。ただ、そんなことは百も承知で、縛られたまま足を折られた荒子や、私たちの後見役である黒原さんらが考えた末の提案だろうから、それも無視はできない…」
多美からは聞いてたけど、中間派の高津先輩‥、なんともバランス感覚が優れたポジティブな人だなあ…



