麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!

ネオフレーム/その17
祥子


「じゃあ、当面の木戸さんは、南玉との関係を取り持つ役どころに就くわけだな。それでまずは、南玉からすれば、あの局面でキャビネット側に引き込もうとしたドッグスを返してもらう。その上で、新たに今後はうまく付き合いましょうってアプローチを受けるとと…。そんな構図って訳だ」

「そうの通りだよ。はは…、荒子総長も南玉をおん出した木戸ちゃんに外で牙を剥かれることは避けたいし、一応、ずっと後見役だった人だから、その取扱いも悩ましいとこだったろうからね。これ、双方にとってメリット有りよ。そんでもって、これなら真樹子さんにも好都合だし、私もねえ…」

またニヤケてるわ、コイツ

「…とにかく、この方針は黒原さんと波沢さんも歓迎してくれてると思うし、奇しくも木戸ちゃんのお口にしてた”都県境全体”の利益につながったと言えるわね。少なくとも、再編成にかかる当面はさ。それにしてもねえ、あの節操のなさがこういう役目をかなえるってのもねえ…。キャハハハ…」

麻衣、テンション高いわ…

ひょっとして…?


...


「でさあ、明日南玉復帰がOKとなっらた、本当にいいの、あんたは?」

「ああ。一応、今日、他の連中には静美が総意を確認して持って来てくれるから、そこで特段強い反対がなけりゃ戻るってことでいいよ」

「そうか。じゃあ明日は顔出し頼むわ。真樹子さんにも言ったけど、そっちの採決後に私の件を諮ると思うから」

「わかった。…でもよう、現実的にどうなんだ?いくら総長が黒原さんという後見役と県外の取り纏め役からさ、全面裁可をとったといってもなあ…。他の南玉連中が、私たちの出戻りを簡単に認めるか?」

「祥子、そこは分けて考えないとね。さっきから触れてることだけど、ドッグスは厳密には出戻りじゃなく”返却”だから。南玉を出た木戸ちゃんからの。南玉からしたらさ、当事者の意を無視して公認チームをそっくり盗んだって映ってるよ。加えて、今の実戦部隊欠落と言う現実だ。木戸ちゃんのアクションは、再建が急務の新生南玉連合からしたら、まさしく渡りに船だよ。残るは感情的なしこりだけとなる…」

麻衣の見解は分かりやすかったが…

...


「そこで、あえて事前にアンタを呼びつけたんだろう。明日はたぶん、ドッグス復帰の議案が出されたところで室内に呼ばれるよ。そこで祥子にはさ、南玉を出た経緯について説明を求められるんじゃないかな。そうじゃないにしても、要はさ、総長はメンバーに納得を得る機会と捉えてるから、何と言っても祥子の口上次第で採決が決する訳だわ」

「おい、おい、あんまりプレッシャーかけんなよ」

「アハハハ…、いいんだって、祥子が思うままにみんなに伝えれば。私を悪もんにすれば、あんた等にはそう悪感情を抱かないで、結構すんなりオッケーよん!…ってことになるかもよ(笑)」

「麻衣…、仮にお前をダシにして私らが迎え入れられたとしても、それじゃあ、その後のお前の復帰がますます不利になるだろうが」

ここでも麻衣はニヤついて、私への答えはばっちり用意されてるらしい