麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑧/発熱の果実たち、迷宮へ…!

ネオフレーム/その16
祥子



意外にも木戸さん、すんなり了承してくれたわ

しかも、えらく機嫌が良かったし…

で…、どうなってんだって疑問は、その後麻衣に聞いたら、即納得となったわ


...


私は麻衣の部屋に上がって、ひと通り報告を済ませた

麻衣め、例によってニヤついてるわ

「何かさあ…、木戸ちゃんと私って変に相性いいのよね。いつも気が付くと、こっちの思うとおり行動してくれちゃってるのよ、何故かさ…(笑)。まあ、あくまで結果としてだけどね」

それは言えてるんだよな…

ここんところ、麻衣と木戸さんの間を往復していて気がついたことなんだが、最後はこの二人双方の利につながっているんだ

それは面白いようにスポンとはまっちゃう感触でさ

それを私は何度も目の当たりにしてきた

...


「しかしあの人、今回の件で南玉連合から除名喰らうんだろう?組織に対しての利反行為ってことなんだろうが、それならよう、自分が引き連れたドッグスをおめおめ返すなんて、全面降伏じゃん。だから、二つ返事でニコニコして戻ってもいいよって言われちゃっても、拍子抜けだよ、こっちは。わかんねーわ、さっぱりだ」

「祥子…。まずはさ、木戸ちゃんにとって、南玉との変なしこりは今となっては不要なんだよ。早々とキャビネットの中でのポジションが付いたからね。それに満足してんだわ、あの人」

「…」

そうも、アッサリかよ、麻衣…

...


麻衣と真樹子さんは”今後”を考えて、キャビネット体制下で、ビップ扱いの客分的ポストを木戸さんに献上したらしい

何でも真樹子さんは、今回の件で姉貴分の黒原さんに大目玉を喰らって、キャビネットを総まとめする立場ではあっても、その行動は自制を強いられる為、勢力下のメンバーを自由に使いこなすことができないみたいでね

加えて、黒原さんからは南玉とうまく距離を取ることを厳命されたんで、自分は一歩下がって、当分おとなしくせざるを得ないって訳だ

そこで、正確には明日の集会で南玉を切られることになる木戸さんを取り持つことを思いついたようだ

木戸さんは私に言っていたよ

「津波さん、私、麻衣と岩本二人にさ、虹の架け橋になって欲しいって懇願されちゃったわ」

「…」

に…、虹の架け橋かよ、おい!

私は思わずのけぞっちゃったよ(苦笑)


...


「麻衣、お前…、木戸にそんな甘言、浴びせたのか?」

「そうね…。祥子にはそう言ったということにしとくか」

この野郎…!

いつもながら、にわかインテリジェンスぶりやがって!

だが、その後の麻衣の説明ですべてに納得が得られたよ

「明日、アンタも南玉の会議に出ればだいたいは把握できると思うけどさ、この都県境は当分、各集団ごとのゴタゴタはご法度ってことが前提になるのよ。もう、私が狂犬に骨差し出してゲームオバー。そして、各々が新しい道を歩み、基本は共生だわね。そうなると、真樹子さんが統括するキャビネットの旗のもとに参集する各勢力もさ、南玉や紅組とは敵対できない。そりゃあ、ベタベタと手をつなぐまでは無理だが、さすがに窓口が真樹子さんじゃあねえ…(苦笑)。でしょう?」

ごもっとだな、それは

「…んで、木戸ちゃんよ。あの人は今でも自分の判断はあくまで都県境全体を視野にした上でって、自負してるからねえ…(爆笑)」

いやいや、そういう絵柄かよ