ネオフレーム/その8
ケイコ



黒原さんはしばらく黙っていた

”それ”が、相馬さん自身は”1年後”と捉えている

そのことをかみ砕いているようだった

で…、私の顔をじっと見つめ、口を開いた

「荒子、やはり次に起こる大きな波風は、この子らが先頭に立つ時期になりそうだね。そのつもりでね…」

「はあ…。でも、私には今一、イメージがつかめません」

「難しく考えることはないよ。もはやこの都県境はさ、猛る女の集団が男達をも呑みこんじゃったんだ。もう内輪でいざこざ起こしてる次元じゃないってこと。だからって、何もお手々つないで馴れ合う必要はない。ケンカしたっていいんだ。この横田さんも麻衣とはガンガンやり合うって意気込みなんだしね。それでいいって」

確かに”今回”で、都県境の猛る女たちは一皮むけたと言えるんだろう

おそらくそれは、組織を超えた一歩高い次元の連帯関係…

南玉を出た矢吹さんと荒子さんがいい例だよ

しかるべき状況に至れば、お互い手を携えることのできる”繋がり”を、二人は確認し合っているしね

「ただ、いざとなったら時のリーダーが、目の前に立ちはだかる敵から逃げずに立ち向かえるって、そういう土台だけは不可決だからね。例えそれが、どんな勢力であっても…。それ、今荒子が考えている進むべき道で成し得ると思う。今のメンツが”今回”を経験したことでね。そんな局面に至ったら、互いの組織関係なしに猛る女たちが自然と結集するはずだって。全く頼もしいや。アハハハ…」

最後は黒原さん、豪快に笑っていた…

...


「ケイちゃん…、さっきの話だけど、”1年後”なら私はメインステージから去ってる。多美には以前から言ってあるからさ。アイツからもよく話聞いて、その辺、今から織り込んでおいてくれ」

ベッツを出て、先輩の車を待ってる間、荒子さんはぽつりと私に”告白”した

私の頭には、ふと相馬さんが口にした言葉が頭に浮かんだ

迷宮…

そこへ足を踏み込んだのは、麻衣と私だけではない…

この夏に発熱した”果実たち”、みんなもだと…

なぜか、そう思えた