龍虎、第2章へ…/その16
ケイコ


黒原さんは、きょとんとした顔をしていた私を見て、思わずクスッと笑いをこぼしていたよ

「確かに乱暴な手段だったけど、結果的にみんなが思う存分にぶつかりあえた。要するに、紅ちゃんがいなくなった”後”をさ、みんなで探り当てたんだ。ふふ…、麻衣みたいなぶっ飛んだ奴がタブーなしの域まで持って行ったら、なんとそこのど真ん中には、私たちとは肌色の違うこんな普通の女子高生が飛びこんできたんだよ、荒子」

「はい…」

荒子さんがそう返事をすると、今度は3人が同時に私の方を向いた

黒原さんと波沢さんは微笑ましそうに私を見つめていたが、荒子さんはもろマジメ顔だったわ…


...


ちょっと間をおいた後、表情をきりっとさせた波沢さんが荒子さんに向かって口を開いた

「…合田さん、私も吹子さんを経由して岩本さんと会ってね、もう止まらない赤塗り拡大の流れを受けて、新たに固まり直してもらいたいと伝えたわ。南玉だとかどうだとかを超えて、東京埼玉のここ都県境で、我々の進むべき道を力強く指示して欲しい…、その一念で訴えた。あなたが湘南に来てくれた時も話したけど…。でも、まさか本郷さんと組んで、あなたを拉致までして暴行するなんて考えも及ばなかった。この件は後日、私からも二人には強く抗議するつもりよ。ごめんなさいね、合田さん…」

「いえ、我々を思ってのことだったのは十分承知してますので…。お二人には感謝しています。すでに本郷へのケジメはしっかりつけ、ヤツと私の今回は清算が済んでますから…」

荒子さんはそう言った後、私の方をチラッと向いた

そう…、この私は本郷とはまだ終わっていない

進行形だよ、ヤツとは

...


だが、何もそれはタイマンの決着を再度つけるということに直結はしない

麻衣と私は各々、己の信ずるところに従って、今後も向き合っていくということだ

普通なら、あれだけ戦いあえばお互い相手を認め合い、その先の関係が生まれるよ

私だって他の人間ならそうなっただろう

だけど、アイツにだけはそんなところで収まることはできなかった

自分の素直な気持ちとして…

...


たぶんヤツもそれ、同じだと思うよ

本郷麻衣と私は、猛る女の聖地で出会ってしまった龍虎ってとこだ

私たち二人の第2章はもうじき幕が開くが、それは間違いなく新たなステージになる

おそらく、それは究極かつ禁断の切磋琢磨であり、これから麻衣と私、互いに擦り切れるまで己をゴシゴシってことになるんだろうね(苦笑)