レイラを先に部屋から出したベルは、ドアが閉まる間際の隙間からニヤリと勝ち誇った笑みを見せた。

バタンとドアが閉まり、ルーカスは呆気に取られていた。


「一体どうなった?」

「ベル様の方が一枚上手でしたね。ルーカス様がもたもたしてるから、レイラ様を掻っ攫われましたよ?」


アイザックは言い捨てて、二人の後を追った。アイザックの仕事はレイラの追尾護衛である。

ルーカスも慌てて後を追って叫んだ。


「こらベル!レイラは俺の婚約者だ!

王城に越してきてから、まだ俺とディナーしてないんだぞ!」


「あんな情けないお兄様なんかやめて、私と結婚しませんこと?レイラ様」



ベルはレイラの手をエスコートしつつ愛らしい笑顔でレイラを誘った。レイラは幼い妹の求婚ごっこにきゅんとしてしまう。


「どうしてお前が先にディナーをするんだ!

俺も入れなさい!

入れろ!

入れてください!」


廊下でベルの背中に大声で放ったルーカスの憐れな台詞は、侍女たちの速い情報網によりあっという間に王城内に伝播した。


第二王子、婚約者にディナーも共にしてもらえていない。なのに、毎夜部屋に通ってるなんて……と城中の者の頭を抱えさせたのだった。