何事もなかったかのように稀代の美女の真顔でベッドに座っていたレイラに、ルーカスが近づいてきた。



ドレス姿のレイラは花の妖精のように過度に美しいのに、両手首を縛られている痛々しさにルーカスの顔が歪む。



「レイラ、大丈夫か?怪我はないか?」

(優しいお言葉……でもなぜ我が家にルーカス様が?)


眉をしかめたルーカスは、縛られたレイラの手を優しく取る。ナイフでレイラを縛っていた紐を切り落とした。



(私といるのは限界だとおっしゃったはずなのに)



無表情のレイラは人を魅了することに長けた青色の瞳をルーカスに向けた。



ルーカスはやはりレイラを見ようとせず、レイラの赤くなった手首に視線を落としている。レイラはルーカスがなぜレイラの家にいるのかに思い当たった。



(ルーカス様は真面目なお方だから……すぐに正式な婚約破棄のお話にいらっしゃったのね。


そしてたまたまこのお部屋に来て救って頂いたなんて、まるで奇跡だわ)


「ルーカス様!こいつ突き出しときますね!」

「ああ、頼んだ」



強盗と窓から上がってきた男のすったもんだが終わり、顔の布をはぎ取られたおじさんが連行されていく。