ルーカスは妹を前にして地を抉るほど深いため息をついた。妹のベルは外面は最高に取り繕い、可愛いフリして、めちゃくちゃ生意気偉そうなのだ。


ルーカスよりもずっと世渡り上手で立ち回りがうまいために、ルーカスはいつも泡を喰わされている。泣いた愛らしい妹の側に、厳しい顔の兄がいれば悪者は、兄だ。


だが、レイラにあんな気持ち悪い手紙を書くなんて妹でも許せはしない。


「なぜ、レイラにあんな手紙を?」


ルーカスは硬く厳しい顔でまだまだ小さなベルを睨みつけ見下した。ベルは兄の剣幕にビクッとする。生意気偉そうにしていてもまだ10歳の少女だ。兄の本気眼力にはたじろぐ。


ベルは唇を噛んでから、ソファに真顔で座っているレイラをチラッと見た。ものすごく綺麗な顔で睨まれていてドキドキしてしまう。レイラはベルを睨んではおらず、ルーカスのお部屋の香りを楽しみ中であっただけだ。


ルーカスがベルに青い封筒を突き付けて、レイラを見た。


「レイラ、すまなかった。この手紙の犯人はベルだ」

(え、ベル様が……こんな熱烈なお手紙を私に?


確かに気持ち悪いと思ってしまっておりましたが、お相手がベル様だというのであれば可愛らしく見えてきましたわ。


私をお食べになりますか?)


レイラは懐が大きく、ちょろかった。


「許せたものではないな。怒って当然だ」


ルーカスがソファに悠然と座るレイラがいつもの無表情で黙っているので、勝手に気持ちを解釈する。


(全く怒ってませんが)