レイラを失うことに異常に怯えるルーカスは、とんでもない妙案の素晴らしさに憑りつかれ始めていた。


またレイラを失うなんて、もう正気ではいられない。


すでにループ3周目のルーカスの頭にレイラの死に顔が浮かぶ。悲壮でありながら、ゾッとするほど美しいレイラの死に顔。ルーカスはぐっと唇を噛んだ。



(もう、レイラの死に顔は絶対に見たくない)



思考の渦にハマっているルーカスの黒髪を、レイラの細くて綺麗な手が優しく撫でた。


「な……!」


ルーカスは思考をブチ切って顔を上げる。儚い美しさを魅せつける青色の瞳がルーカスをじっと見つめていた。


(ハッ!可愛くてついつい触ってしまいましたわ!)


ルーカスはレイラが引っ込めた手が名残惜しかった。だがその手を追うことはせず、膝の上に乗せたレイラをまた両腕で抱き寄せる。


彼女を見つめることも、言葉を交わすことも恥ずかしく、うまくできない。なのに、今は抱きしめた手を離せない。ルーカスは真面目ゆえに、ふっと糸が切れた瞬間に大胆になってしまう。


怖かった。また、彼女を失うと思えば怖くて、生きている彼女に触れていたくてたまらない衝動を抑えきれないのだ。


ルーカスは繰り返し押し寄せるレイラの危機に、行き詰まりと恐怖を募らせていた。