(離さないで欲しいって思いましたわ。ですがこれは、どういう幸せですか?!もう死んでしまいますわぁ!)


爆発事件のあった王立劇場から馬車に乗り、王城へと帰宅してからすでに何時間たっただろうか。


レイラの自室へと一緒に帰ってきたルーカスはソファの上に座り、その上にちょこんとレイラを座らせてずっと大事に抱きしめたままなのだ。アイザックは侍女を引き連れてにこにこ部屋から出ていった。


二人っきりの部屋で、レイラの首筋にルーカスが頭を乗せている。


「もうどうすればいいのか、わからない。こんなに簡単に君はいなくなってしまう。俺はいつも愚鈍で、後から気づいて君を危険に晒して、どうしようもない」


レイラの耳に言葉としてはっきり聞こえてこないつぶやきを、ルーカスはずっとブツブツ唱え続けていた。


(ルーカス様にまたご迷惑をかけてしまいましたわね。未遂とはいえ、また騒ぎの現場に……落ち着いたら婚約破棄する予定がまた狂ってしまいましたことをお嘆きなのかしら)



でもレイラに縋るようにぎゅうと抱きついたまま離れないルーカスは非常に可愛らしい。


(レイラは手を離した瞬間に消えてしまうほど脆い。もういっそ俺しか見えない場所に閉じ込めておく方がずっと安全なんじゃないだろうか。そうすれば、誰も俺からレイラを奪えない)