侍女が頷いた瞬間にルーカスは、外へ飛び出した。馬屋へ一目散だ。馬車など待ってられない。


「馬を貸せ!」

「殿下?!待ってください!」


厩番の引き止める声も聞かずに、ルーカスは慌てて馬を駆った。ルーカスは昨日のレイラの一言を思い出していた。


『外に行きたいのです』

(まさか外に行きたいって観劇に行きたいと、そういう意味だったのか?!)


珍しいレイラの要望にすぐに応えたつもりだったが、ルーカスがやったことは全く斜め上だったようだ。


今更気づく。あの時、勘違いしたルーカスが「かまわない」と言ったために、こんな事態に陥っている。


(くそっ!レイラが話したのに!俺はなんて愚鈍なんだ!)


レイラの壊滅的な言語能力を生真面目なルーカスは、絶対に責めない。ルーカスの過失なのだ。


ルーカスの頭の中に最悪のシナリオが出来上がっていた。


今日は劇場で爆発事件が起こる日だ。そんな危ない場所にレイラが行ってしまった。


(まさか、こんな形でまた君を失うのか?!)


ルーカスは必死で馬を駆る。もう爆破時刻だ。