(おかしいな)


ルーカスは王立図書館の入り口ですでに違和感を持った。入口前にたむろしているはずの、レイラ付の侍女たちがいない。


(今日は図書館に来ていないのか。珍しいな)


日がな一日図書館で本をぶっ通して読んでいることが多いレイラだ。自分で選んだものを読むのではなく、本棚の端から全部しらみつぶしに読むのが彼女のスタイルである。


最近は推理小説の棚を進んでいるのをルーカスは知っていた。


ルーカスは入口で踵を返し、彼女の部屋へと向かう。

レイラの部屋の前で、見知った侍女を捕まえた。


「レイラはどこに」


端的なルーカスの問いに、侍女は目を丸くした。昨日も一緒に寝ていたくせに知らないのかとでも言いたげだ。


「レイラ様は観劇に行かれました」

「観劇?まさか王立劇場へ?」