執務室にて、ルーカスは第二王子として公務事務作業をこなしていた。


(3度目ともなると、簡単過ぎてヒマだ)


公務事務を完璧にそつなくこなして、今日も時間を持て余している。

周囲からは、前倒しで進む快適な進捗にまるで何度もやったことがあるようだと評価を得ていた。それな。



ルーカスは執務机の上に新聞を開いて、今日の日付を確認する。



(今日は劇場爆破事件の日だな。警備は事前にしっかり増加しておいた。今回こそ無事に防げるといいが)



新聞を閉じて公務に戻ろうと思った。だが、仕事がない。


(こういう事件の日付はズレたことがない。しかし、レイラが死ぬ日がズレる。片時も目を離さないようにしなくては……そう、片時も)


右左へと二度視線を泳がせたルーカスは立ち上がった。


「殿下、どちらへ?」

「休憩だ。図書館に行って来る」


さらっと老人の側近に告げてルーカスは出て行く。そんなルーカスの背中を、老人はにんまり見つめていた。


「お若いですなぁ殿下。ホッホ」


王立図書館には、第二王子の隣に越してきた婚約者が通い詰めだと誰もが知っていた。