ルーカスはそのまま部屋の灯りを消して、ソファに横になって寝始めてしまった。レイラは嬉しさと戸惑いで鼻血が出る!と鼻を抑えたが全く顔が動いていないのでご安心を。


(嘘でしょう嘘でしょう?!一緒に、一緒の部屋で同じ空気を吸って寝ている?いいんですのこれ?!


これが今時の花嫁修業ですの?!)


(俺が言い出したことだが、息が、寝息が、息が聞こえてくる、息苦しい死ぬ!!息まで美しい!)


一応ベッドにもぐりこんだレイラは、もちろん一睡もできなかった。だが、ルーカスの息の音を耳を立てて聞いて一晩過ごせたので、また神からの贈り物をもらってしまった。





次の朝、目の下にクッキリと隈をつくった第二王子がそそくさと婚約者の部屋から退場した。


(一つ屋根の下で寝てしまった……これはもはや同棲と言って過言ではない。いや、おちつけ俺)


お隣暮らしだったはずだが、ルーカスさえも同棲だと思い始めれば、これはもはや同棲だと言って間違いなくなった。


(人生で一番幸せな夜でしたわ……)


部屋に残された婚約者は全く幸せそうでなく「無」の塊だった。無表情鉄仮面のレイラは幸せ満喫中だ。


だが、二人をそれぞれ目撃した侍女たちは「第二王子が無理にレイラを押し倒したので怒っている」と、ソワソワ噂したのだった。