レイラは豪華絢爛に整えられたルーカスのお隣部屋で、美味しい食事を提供され、優しい侍女たちに囲まれて、図書館で本を読み、何の不自由もなく一日を過ごした。


(これは夢かしら……ルーカス様と同棲して生きてていいだなんて、私ものすごい徳を積んでいたのかもしれませんわ)


すっかり同棲気分のレイラは今日一日で何度そう思ったかわからないほど、幸福に包まれていた。


ソファに座って窓から外を眺めて幸せに浸っていたレイラを背後から眺めていた侍女たちがコソコソ話す。


「レイラ様、今日一日で何回喋ったか知ってる?」

「一回も聞かなかったわ」

「私も」

「何食べても、何を着ても、本を読んでいてもお顔がピクリとも動かないの」

「ルーカス様のお隣に越してきたこと、ご不満なのよきっと」

「そうよね、急だったもの。お二人は不仲だって噂だしね」

「ルーカス様の片思いなのかも」

「レイラ様ったら、ちっとも嬉しそうじゃないもの」


第二王子は婚約者にゾッコンだが、全く相手にされていない説がまことしやかに芽吹いた瞬間であった。


レイラはこんなに幸せを噛みしめているというのに、周りの認知との落差が激し過ぎる。


夜が訪れ、レイラがすっかり寝支度を済ませたころ、部屋に来客があった。色めいた侍女たちがささっと引いていった。


「レイラ、不便はなかったか?」